【3】場よりも前にある「所(ところ)」を中心にする

2018年11月3日土曜日

所づくり

ここまで作るのに作業日だけで丸2週間ほど。

場づくりと所づくり

「場を開く」とか「場づくり」というときの「場」というのは、大抵は二人以上の人が集まって一緒の時間を過ごしていくときのことを言う。

そのとき集まる場所が具体的にどこで、どんな場所なのかは、場を開いたり場作りするのにとても大切だとされているけれど、基本的に開きたい場、作りたい場がより豊かになるようなところを”選ぶ”感覚が強い。

以前のぼくがそうだった、というより、ぼくも含めて多くの人がそれ以外のやり方や考え方ってあるの?というくらい、「場所」の「場」を中心に考えるのが普通で一般的だろうと思う。

「場づくり」ならぬ「所づくり」なんて言葉は全く耳にしないけど(※1)、自分で家を作ってみて人を招いたり、人の家で開かれる場に行く中で、最近は「所」を中心にすることに確信を持ってきた。


所の大きな影響力

そもそも「場」を中心にする場合にも、人の気持や環境から受ける影響みたいな微細な感覚を大切にするたぐいの催しで「会場」や「会場の環境」を重要視するのが、「所」の影響力を物語っている。

以前、10日間連続の催しを開くとき、多くの候補をあげてその中からいくつかの施設に下見に行き、悩んだ末に結果スタッフも会場も会場の周辺の環境もとても良い(アクセスだけが難点だった)所に決まったのだけれど、当日どうしても借り物感が妙に鼻について、あれこれ試行錯誤したことがある。

最終的には、会場にある物という物を、同じ場所に置くにしろすべて一度は手で触れ動かすことで解消され、その後日を追うごとに自分たちの場ができていったのだけれど、あのときスタッフと参加者で作っていたのは一つの場でもあり、10日だけの所が構築されていったのだと今になって理解できるようになった。

人が集まる会場は、単なるハード(器)ではなく、そこにある一つ一つの物からでさえ影響を受けるような基礎を構築している。そういえば、「心理学系のセミナーの講師も最終的には会場は自前のものを持ちたがる。」と以前に聞いたことがあるけれど、おそらく人の心理のような微細な影響を扱う場合には、人の心の基盤に影響を与えるような「所」を人任せにするよりは、自前のものを用意したほうがやりやすかったり、毎回ゼロから基礎をつくるより総体としての労力が低くなるからなんだと思う。

膨大な時間をかけてちょっとずつ形になっていく「所」の豊かさ


全く違う側面では、大型のショッピングモールとか、大都市の中心となる駅に直結した商業ビルとか、巨額のお金をかけて作られた「所」には、大量のお金や時間を消費したがる人が集まる。この場合全ては貨幣価値が中心で、誰かが企画し、誰かが施工し、誰かが出店し、誰かが来る。微細な「その人性」などは脇において、いかに多くの人が集まるか、多くの人が消費するかに、はっきりと照準が絞られている。

僕自身はたまーにそういうところに行くのもそれはそれで面白く(ひどく疲れるけど)、巨額のマネー社会のクソッたれってなことが言いたいんじゃなくて、「場づくり」をやろうとしている人こそ、お金中心大量消費”じゃない”方へ行こうとしているはずなのに、肝心要の「場づくり」の基礎が、「たくさん人がくるように」とか「少しでも見栄えがするように」とか、ショッピングモール式の考え方で作られちゃったりしてるよね、というお話。

ぼくがこれまで考えを深めて、実践してきた中で”そうじゃないやり方”をするには、もう「所づくり」っていうことにしかならないんじゃないかと思ってて、一般的にとか、多くの人がどう思うかとか、そういうんじゃなくて、そこにある一つ一つの物が「そこにある」ことに、どれだけ時間と労力を使ってきたのか、という総体が織りなすそこはかとない雰囲気。そこに住む人の”その人性”であり、”その家性”を高めていくことで、いろんなことが起こったり人が集まったりする豊かさみたいな方向が一つの目指す方角なんじゃないかと思ってます。

ま、このやり方の難点はなんせ時間と労力がかかること。お金をはらってぱぱっと価値を高める、みたいなことから外れてるので、膨大な時間をかけてちょっとずつ形にし続けていくことになります。けれど、形にしたものはちゃんと自分たちの土台になっていくから、自分以外の誰かに崩されたり揺らされることはない。

基礎から作ったこの家で、場の基礎を形作っていく、盤石の土台。

あとは場をつくらないとね。

ということで年末にこんな場を開きます。
最後の「読む書く残す」と「音読」の言語合宿(12/22-24)
玄関の改築はもちろん、サンルームも作っている予定(なかなか進まなかったのでちょっと間に合うか心配になってきた)なので、集まった人とニュースタイルの我が家でなにかできるのが楽しみです。

※1
実は一度だけ耳にしたことがあって、言ったのはまるねこ堂の大谷さん。自覚的に膨大な時間をかけて所を作っている「所づくり」の最先端だと思う。